オデュッセイアを観てきました。
以下ネタバレありの感想です。結論としては、とても面白かったです。
ギリシャ神話については「あ、トロイの木馬だ、知ってる単語だ」というくらいで、そこまで詳しくはありませんでした(嘘です、もうちょっと詳しかったです)。
今回の映画の中では、トロイの木馬についての語り口がとても面白いなと思っています。
これまでは「画期的な作戦」として、戦術的に比較的プラスの意味で語られることが多かった印象でしたが、今回はどちらかというとマイナスの側面に焦点を当てていたところが興味深かったです。
IT業界でトロイの木馬というとマイナスのイメージがありますが、この考え方を少し深めてみると、相手の裏をかいたりルールの隙をついたり、画期的なことをした際に起きる社会全体への大きな影響に対して、どのように立ち向かっていくかを描いているような作品だと感じました。
そう考えたときに、私の中では昨今のAIをめぐる話が割と近いのかなと思っています。
今、2026年9月16日現在、世間ではAGI ができた、そろそろできるかできないかという、ちょうどそういったご時世です。
もし今、AGI を人知れず作ってしまったという人がいた場合、もしかして今回の「オデュッセイア」のような心持ちになるのかなと想像していましたAGI が社会に存在したときに、具体的に何がどう変わるのか、いろいろ議論はされているかと思いますが、まだわからないところかなと思います。
ただ一つ言えるのは、人間が一番中心になっているという、今までの暗黙のルールみたいなものに一つ綻びが出るということは間違いないのかなと思っています。
自分が作ってしまったもの、自分が行ったことによって、これまでの社会の秩序が変化してしまう。それも不可逆的に変化するということに対して、自分は今までと同じ気持ちで社会に居続けることができるのか、この辺りの心境が近いのかなと思いました。
これは開発者目線で少し話してしまったんですが、もしかすると我々、普通に AI を使っている人間に対しても同じことが重なる部分があるのかなと思いました。
AI を使う前に我々は戻れるのか。使ってしまったときにそれに対してどのような変化が起きて、それを持ったまま元の通り社会に居続けることができるのか。何か一つ、心の中で整理しないと進むことができないのか。いろいろと考えることがあるのかなと思いました。
本編でオデュッセウスは、葛藤の末に国へ帰ると決めます。
彼が下した結論は、自分の中の葛藤がありつつも社会に戻る、自分がやってしまったことを自覚しつつこれまでの掟の範囲内に自分を置くという選択をしたのかな私は感じました。
社会へのあり方として、自分の中でのけじめのつけ方というのもあるんですが、それとは別に既存の規定みたいなところを少し重視していくような形ですね。
ここのコンフリクトをどう処理していくのかというのが、ある意味で今後人間が動いていく、社会として活動していく中で重要なのかなと思いました。
オデュッセウスは神に身を委ねることで国へ帰ることができましたが、我々は何に身を委ねれば良いでしょうか。 今作の世界観でも「生贄(ヤギ)の血を捧げよ...」のような描写があるので神と人との関係は互酬っぽさを感じます。ここは日本に近い。 我々がAI(AGI)を生み出したことによって感じる苦悩は、何を受け入れ、何に助けを求めることで乗り越えられるのでしょうね? 宿題だー。
クリストファー・ノーラン監督の作品は自分もそこそこ観ていたのですが、統一感のある一貫した脚本というイメージを持っており、今回も近い印象です。
細部の表現から「きっとこういう意味があるんだろうな」というところを想像しながら観るのはとても面白かったです。
3時間近い内容を全て思い出せる記憶力はないので、もう1回くらいは観ると色々発見がありそうです。
『オッペンハイマー』などまだ観られていない他の作品もあるので、今後観ていきたいなと思いました。
以上。

