re:Invent 2026に向けて、現在社内で色々と提案をする機会があります。
会社にお金を出してもらうためには、ビジネス価値を創出することを具体的に説明しなければいけません。要は費用に見合う価値がある、つまり会社は経済的な団体なので経済的な価値を生む効果がある、と説明しなければならないと考えています。ただ、私が感じたのは「海外の大規模イベントはそれとかなり相性が悪いのでは」ということです。
海外イベントに人を派遣する価値とは?
まず正攻法で考えてみましょう。海外イベントに行くにあたり:
- 誰が行くのか
- その人が行くことによってどのような効果があるのか
- その効果にビジネス的な価値があるのか
というところを論証していく必要があると考えます。
AWS re:Invent を例にします。
1. 誰が行くのか
AWSの知見がある、もしくはビジネス的な価値を生み出せる立場の人間というのが一つの要素になると思います(これから学習していきたいという人でもいいですが、目的によります)。
AWSに関してのイベントという立て付け上の制約です。
2.どのような効果があるか
では、参加した人がどのような価値を持ち帰るのか、re:Invent が提供できる価値とは一体何なのか。
ここが一つ目の難所。
ある程度ペルソナを固めないと、参加したことがない人間はイメージしづらく、かといっていきなり部下から説明される上司の立場からすれば「どういう価値があるのか想像ができない」という状態で話を進めるのは不可能です。
現地に行く価値としてざっと考えたものは以下の通りです。
• セッションや新サービスの発表:
AWSの知識や知恵を得られますが、これには一つ落とし穴があり、日本にいながらでも映像を見ることができます。直接参加特有の価値とは言えません。
• 体験型のセッション(GameDay、Jam、対話型のインタラクティブなセッションなど):
(私は一度も行ったことがないので情報をもとにした想像ですが)そういったインタラクティブな場から得られる知見は、その場でしか得られないものだと思います。
• 本国AWSの開発者に直接質問できる場:
具体的なユースケースで困っている場合、最も短いレスポンスで回答を得られる可能性があります。
• コミュニティ限定イベントや横のつながり:
Community Builders や、昨年もあった All Certs、ユーザーグループ、日本からの参加者コミュニティなど、参加者同士のつながりから得られる知見もあります。
ただし、これらはあくまで「AWSに関する知識・知見」です。
ビジネス的な側面での知見を得られることもあるかもしれませんが、それを事前にお金を出してもらう理由にするのは難しい。
なぜならre:invent の主目的は技術イベントであり、ビジネス面を強調するにはイベントの看板が合わないためです。
特に一度も行ったことのない人間がプレゼンする場合、非常にハードルが高いです。
3. どの様なビジネス的な価値があるのか
では、仮に「海外イベントに参加して技術的な知見を得る」として、それがどうビジネス価値につながるのか。
考えられるルートは2つ思いつきました。
- 組織のミッションクリティカルな課題を解決するルート:
新しく発表されたサービスがどういった問題を解決するのかを現地でいち早く確認し、組織の課題を解決する、という因果関係です。
しかし、これも事前に説明するのが非常に難しい。そもそも既存の課題であれば、日本からでもTAMやSA、AWSサポート経由で問い合わせが可能です。re:Invent の強みは速報性にありますが、まだ発表されていない技術に対して「それがどう課題を解決するか」を事前に説明することはできません。 - 社内のAWS熱を高める(若手育成・啓蒙活動)ルート:
「イベントに行ってきた」「こういう体験をした」という熱量を持ち帰り、社内を巻き込んでいく側面です。
ただ、これも「会社としてAWSをどのくらい拡大させていきたいのか」「そこにいくら投資できるのか」「本当にそこまで成長する価値を出せるのか」という説明が非常に難しく、どうしても憶測の話になってしまいます。有望な若手がいるとしても、「なぜ re:Invent に行く必要があるのか」を個人の特性に合わせて具体的に説明できなければ通らないですし、そうした明確なケースは稀です。
おそらく多くの人が考えるのは以上の2つのルートだと思いますが、結構さっくり反論できる余地があるので個人的にはどちらも事前に会社を説得する理由としてはちょっと弱いかなと思っています。
(まとめていて思ったのですが、この1~3の順番も事情に左右されそうな気がしますね。
1はいける人間のリソース次第、re:inventで価値が出そうなビジネス的な施策があるか、AWSへの力の入れ具合などなど、かなりタイミングにも左右されそうなので、この辺りはフレキシブルに対応する必要がありそう。)
では海外イベント参加の意義は?
じゃあ海外イベントに行く意味はないのでしょうか?
伊達や酔狂でだけで毎年何十万人もの人が集まる規模のイベントが開催されているのでしょうか?
ここからは一回も海外イベントに参加したことのない人間の妄想ですが、コミュニティに携わるものの端くれとして想像も含めて考えてみます。
オフラインのイベントが持つ効果というのは、事前に決められたものとは違うセレンディピティの機会に強みがあると考えています。
実際に現地で意図していなかった情報に触れ、人と話すことによって、今まで自分が考えていたことと結びつくひらめきを得られる。それがオフラインイベントの最大の強みだと考えています。
私は JAWS-UG といった AWS のコミュニティを開催したりもしていますが、なぜそんなことをしているかというと:
• あまり興味を持っていなかったり知らなかった分野について、熱量を持って話す人と直接会話・コミュニケーションを取ることで新しいアイデアが浮かぶ
• 自分が相手に説明することで、自分の頭が整理される
• 自覚していなかった課題や問題に気づき、それについてのアドバイスをもらってブラッシュアップできる
こういったことが、意図しないテーマに関しても偶発的に起きるのがオフラインイベントの良さです。
パッションが伝播するみたいなことなのかもしれません。
(AWSのSAさんにも「熱狂を感じてほしい」と言われた記憶がありますが、より分解すると上記の様な説明になるかもと思っています。)
ただ一方で、これは直接的なビジネス価値を求める場面では非常に説明が難しいと感じます。あくまで仮定の話になってしまうからです。
コミュニティ参加に一定の理解があったりやそういった文化がある会社・部署なら通りやすいかもしれませんが、初めて海外イベント(特に技術目的)に参加するようなケースだと、「なぜ派遣しなければいけないのか」に対して「セレンディピティの確率が高いから」という説明は少し抽象的にすぎるかなと思いますし、承認する上司の立場から見ても通しにくいと思います。
これはある意味ジレンマで、決裁を取るために多少の「嘘」や建前が必要なのかもしれません。ただ、そこをどううまく説明するかが腕の見せ所なのだと思います。
(ここで、具体的な話を想像ででっち上げてしまうのも、最初の一手としては正攻法かもとなぁと最近は思っています)
ただ、自分の中でもまだうまい説明の仕方が見つけられていないので、引き続き考えていきたいです。良い手法があったら教えてほしい…(切実)
ここまで書いてなんですが、どの様なことに価値をおくかはまさに企業理念に直結する部分なので、訴え方はそれこそ企業・部署ごとに千差万別だよなぁと…
海外イベント、特に re:Invent について現時点で考えてみたメモとして残しておきます。
以上

